早朝の冷え込みはあるのの、風に包まれて目覚める朝はなかなかに心地よい。
歯磨きついでにシャワーを浴びてきてから、手持ちのオレンジを食べた。しまった~と思ったけど、歯磨き後のわりには案外変な味がしない。
ぼ~っとしていると、しばらくして船は港に立ち寄った。桟橋に横着けするとそのすぐ横にトラック止まった。僕のハンモックのすぐ側に、枠つきの四角い大きなマンホールのようなところがあり、そこが貨物室の搬入口になっていた。そこの扉というかフタを開けて、中に山と積まれている大量のズザ袋を、まるでバケツリレーの様に運び出す。
トラックはすぐに一杯になるのだけど、次から次へと新しいトラックが横着けしてくる。ヒマだったので貨物室の中をまじまじと覗いて見ると、食料の他にもオートバイとかも積んでいる。
隣の親子が買い物に行ったので荷物番をしていたのだけど、戻ってくるとオレンジとチーズを分けてくれた。そのチーズは350ml缶よりも大きなモノで塩気が強く、手持ちのリンゴと一緒に食べるとよく合っておいしい。
問題なのは大きさと保存方法で、そうそう食べきれるとも思えない量だし、こんなアマゾン河の船上の常温?にしていて腐らないものかと考えてしまう。となりの親子を見てみると、さすがに一度には食べきれない量なので残しているけど、普通にビニールに包んでいるだけだったのでマネしておくことにした。
一体いつになったら船は出るのか分からんな~と、外を見ていると、一人のおじさんがやってきて手釣を始めた。パクー?という平べったい魚やら、昨日屋台で食べた様な魚がぽんぽんと釣れて、その手つきは鮮やかだ。それをどこかで見ていたのか、それとも船が来るとそこが良く釣れるポイントになるのか、三人 四人と人が集まってきて、せまいスペースがあっという間に大混雑してしまった。
遊びとしての釣ではなく狩りとしての釣なので、つれない魚をどうやって釣るのか?ってスタイルではなく、釣れる魚を釣っていくってスタイルだ。
そんな風景を見ていた時に 「どこから来たんですか~?」 と日本語で話しかけられた。見ると年の離れた日本人とおぼしき男女で、女性がとても若い!
「日本からです」と答えて、旅の話やちょっとした情報交換をした。
その人たちはベレンからマナウスに向かっていて、僕とはまるっきり逆のコースだ。向かいに停まっている高そうな客船に乗っていて、やっぱり積荷を上げ下ろししているのを待っているそうだ。
僕が釣りに来たと言うと男性も釣りをするようで、「自分も道具持って来ればよかった~」とくやしがっていた。
中年~初老の中間くらいのロン毛の男性に、白い肌をあらわにした若い女性のカップルは見るからに怪しい。二人は鎌倉だか湘南だかでお店をやっていて、そこの店長と従業員という関係だそーだけど、いやいやいや、どーみても〇ってるつか、大人な関係と言うか、チキショウ羨ましいよう!人肌恋しいよう!!
久しぶりに見た日本人女性の肌だったからガン見しちゃったのにアイスおごってくれてありがと~とか、「飢えた目してたよね~」とネタにされちゃうじゃん!?とか、とにかく久しぶりの日本語の会話ではしゃいでしまい、いつもお喋りな僕がさらに喋ってしまった。ハズカシイ。。。
昼を過ぎてもまだ積荷を下ろしていて、一向に終わる気配がない。船が動こうが止まろうが基本的にはヒマなのだけど、こうしていつ終るか分からない作業を待っているのはシンドイもので、そうゆうのが表情にでていたのか、お父さんが「そこでゴハン売ってるから買ってくれば?」と 声をかけてくれた。
サンドウィッチとオレンジジュースを買ってきて、食べたら眠くなってきたのでウトウトしていた。
結局船は夕方の5時頃に出航した。その時先程の二人組みの日本人が見送りにきてくれた。
ほんの数時間前に出会ったばかりなのに、少しさみしくなる。 「元気でね~」 「気をつけてね~」 「よい旅を~」 互いに叫びながら出航した。が、何故か船は180度回って、今居た桟橋の左側から右側に移っただけだった。
「なんか戻っちゃった~」 と笑いながら言う。どうやら積み残しがあったようで、少ししたら本当の出航になった。「またどこかで~」 僕は最後にそう叫んだ。
物売りでマナウスから乗船していたおじさんが、涙を流すゼスチャーをしながら 「涙のお別れか?」 と僕をからかった。隣のお父さんも話しかけてきたので、「さっきの子可愛かった」って言ったら、 ハハハ!! と豪快に笑われた。。。。
この空間 この空気 心地よいな。
船が出るとすぐ暗くなりはじめ、夕食の時間になったらしく静かだった船内がざわついてきた。
お父さんに「もうご飯たべられるよ」と言われ、さっそくいつもの二階の食堂にいったのだけど、中が真っ暗で誰もいない。でも所々ハンモックの下で食事をしている人もいるので今日は違う階で作っているみたいだ。
元いた階に戻ると、なんのことはない僕のハンモックのすぐそばの部屋が今日の食堂になっていた。
受付のおばちゃんに5レアル渡すと、もっと細かいのちょうだいと言われたので2レアル渡す。
5レアルは返してくれて、もう1レアルと言われたのでポケットを探ってみるけど50センターボ(1レアル=100センターボ)しかない。するとおばちゃんは「まあいいわ」と中に通してくれた。
今日もビュフェスタイルになっていいて、基本的にはいつも通りだ。米・ソバを少しずつ取り、大きな肉の塊やポトフに似たごった煮を上からたっぷりとかける。スプーンがなかったのでフォークだけを取り席に着いた。
今日はトマト風味がするけど、馴染みのない香辛料が使われているので何味とは言えない。
基本的にはこのソパSOPAが毎日出るのだけど、一応飽きないようにとの配慮なのか少しずつだけど味は変えてあるのが嬉しい。こってりとしている割にはアッサリ風味なので食べやすく意外なほど飽きない。
ある程度食べて皿の中身が減ってくると、そこにファリーニャ(マンジョーカ芋で作ったクスクスに似たもの)をかけて汁を吸わせて食べるのだけど、今日はフォークしかなかったので、すくって食べる事ができない。
「あちゃ~失敗」なんて思ってると、隣で食べていた黒人の兄ちゃんが「こっちにスプーンをくれ!」と叫ぶと、係りの人が持ってきてくれた。「オブリガード」と二人に言うと、親指を立ててうんうんとうなずいていた。
ブラジルでは知らない人同士でもよく声を掛け合っていて僕にも同じ様にしてくれる。よく言われるように治安が悪いというのも分かる。でもそれ以上に毎日をより良くするために皆が声を掛け合いちょっとした事に気を配っていて、それがとても自然なのだ。見せかけではない紳士達だ。悪い奴は何処にでもいる。被害に遭えば印象は悪くなるだろうし、良い出会いがあればよい国だと思う。ただそれだけの事なのだ。
朝寒くて目が覚めた。寝る前にはいつも蒸し暑いので油断してしまうのだが、それでも薄手の長ズボンとダウンジャケットを着るのだから、ものすごい変わりようだ。
朝食代わりに昨日のチーズとオレンジを食べてから、シャワーを浴びに行く。その時ついでにT-シャツとパンツを洗う。山岳速乾系のものなので、ぬれたまま着ても乾いてくるので便利だ。実はこういった日常的に使っているものにこそこだわるべきで、衣類・リュック・足にあった靴やサンダルの良し悪しで旅の質は大きく変わるのだ。
昨日のように港に立ち寄るらしく、しばらくして船が速度を落としてゆく。
入港するといつもの様に物資の上げ下ろしをしていて、それと一緒に物売りもいて果物・チーズ・パン・ジュース・お菓子・今回はアサイーもあった。昨日貰ったチーズを大量に食べていたのですでに満腹だったのがくやまれる。立ち寄る事を知ってたらあまり食べないでおいたのになぁ。
こういった人が動いている時は皆浮き足立っているので、物がなくなりやすい時でもあるのだけど、いつ・どこで・何が危ないのかは自分で考えるしかないので、疑心暗鬼にならない程度に、楽しめる程度に気を張っておきます。
人と物の流れを満腹で眺めていたら、いつの間にか寝てしまった。
次に起きたのは11:30頃で食堂を覗くと開いていたので、もうすぐお昼だし早めに食べる事に。
昼食にはサラダが付いているので8レアル。米とソバを少なくしてサラダと肉を多めに取った。というのも、船内をうろうろする以外は動く事もないので、食欲に任せて食べていると“あっ”という間に太ってしまうのだ。でもおいしいので結局はたくさん食べてしまう。
僕には常用している薬があるのだけど、聞いていた話よりも船内泊が長く先に準備していた分が足りなくなってしまったので、先の事を考えてメインのリュックから少し余分に出しておいた。海外ではまず入手出来ないコレは、釣り具よりも大切なものなのだ。そのとき隠れた位置からコッソリとこちらを覗っている人がいる。昨日お父さんが「あの人はよくない人」と教えてくれた人で、僕も一目見たときにそう思ったので確信に変わる。これでもうあの人の事は大丈夫、しっかりと分かっていればどうってことではなく、後は僕が隙を見せるか見せないかだ。
この後も港に寄ったのだけど、規模に係わらずどこでも物売りが現れて、今度は子供のパン屋さんもいる。船は一度止まってしまうととたんに蒸し暑くなり水分が欲しくなる。とくにアイスが食べたくなるのだけど、それは他の乗客や船員も同じで、一人でもアイス屋さんが来ると我先に群がる。その割りにあまり売りに来る人も少ないのが不思議だ?
傘を入れる細長いビニールを20cmくらいにしたようなものに入っていて赤・黄・白とあり、オレンジだと思って買ったのだけど、、、、、、 甘い味はするのだけど謎の味だ。確実にオレンジではないのだけどマンゴーとかでもない。何だ?何の味なんだ?
港は殺伐としておらず、のんびりムードです。
『千と千尋の神隠し』の電車のシーンのような感じで、ここで降りたらどーなるんだろーなーと思ってました。その内やってみるか(笑)