『街を案内してあげる。』 そう言って夕方に目が覚めた僕を誘ってくれた。
今まで行った事のないエリアや、知っていたけど入った事のないところをゆっくりと案内してくれた。そこで見たブラジルの人々は今まで思っていたよりも、ずっと洗練されていて驚いた。
少しづつ暗くなってゆくこの街に、こんなに長い時間出ていたのは初めてで、部分・部分で知っていた景色よりも綺麗で、とくに空の色合いが美しい。
街の中とはいえ日が落ちるのは早く、ちょっとすると一気に辺り一面は真っ暗になってきた。
カフェに立ち寄り一息ついていると、騒然とした昼間とは違う雰囲気にになんとも不思議な感覚にとらわれる。
こうやって過ごしていると、日本の事 ブラジルで感じた事 自分の事 なんでこんなに素直に話してしまうのかと思うほど喋ってしまう。
しばらくして今度は和食レストランに連れて行ってくれた。『日本食が恋しいでしょ?』ってだけじゃく、ブラジルにある日本を僕に見せる為のものだというのが伝わってくる。
お腹の調子が良くなっていたのでお刺身を食べた。久しぶりのお刺身というのもあるだろうけど、とてもおいしかった。
『日本では旬だというけど、そんなことより獲れたてをすぐ食べる。そうしたらどんな小さな魚だっておいしいんですよ』 おじいさんがそう言ってたけど、全くその通りだと思った。
ゆっくりと過ごしていると飛行機の時間が近づいてきたので、荷物を取りに家へと帰る。家族と少しおしゃべりをし、「お世話になりました」とお別れの挨拶をした。
出会ってすぐの僕に自宅で食事をご馳走してくれて、旅行では見えないブラジルの日常を垣間見せてくれ、ブラジルでの日本人の歴史を話してもらい、最後は空港まで送って下さり、本当にお世話になりました。あなた達の優しさに触れられて、今まで見えなかった新しい景色がみえてきました。
本当にどうもありがとうございました!
飛行機料金を安くする為に夜中の出発にしている。移動距離的にはそれほど長距離ではないので目的地に着いてもまだ真夜中だった。こんな小さな空港なのに24時間開いてるなんてすごいなあ。朝になるまでまだまだ時間があるのでとりあえず硬い長椅子で横になり、眠ってしまった時に荷物が盗まれないように体に縛り付けておく。
朝になり目覚めると体のあちこちがこわばって痛い。ガイドブック『歩き方』にも出ていないエリアなので、この辺りの街の様子が全く分からないので、着いたらとりあえず地図を買おうと思っていたのだけど、空港内には小さなカフェと免税店的なお土産屋さんしかない。荷物を持って外に出てみても見渡す限り何もない。
「ん~~~ どうしようかな~~~~?」と考えた末に、空港内にあるタクシー会社の受付に行ってみた。ボッタクリも多いけど、タクシーの運転手の知識は各種方面に幅広いので、ひとまずセントロに行ってみようと思い、そこまで幾らくらいで行けるか聞いてみた。一目で旅行者と分かる僕に『どこから来たんだ? 何しに来たんだ?』と聞いてきたので、「日本から釣りに来ました。」と答える。すると知人に漁師がいるのでそいつを教えてやるってことになり、電話番号を教えてもらう。それと『ここいっとけ』みたいなホテルも教えてくれた。教えてもらったお礼にタクシーに乗りホテルまで行く。
そこは日本語の通じるホテルらしくありがたいのだけれど、実際に着いてみれば日本語は全く通じない。まあ日本語で旅をしようとも思っていないので別にいいのだけど、一瞬ラッキーと思っただけにちょっとショック。とりあえず今日はここに泊まって本屋を探し地図の売っていそうなところを探すかな~ と思っていると、ホテルの受付の男性に『日本語が分かる人に電話したからちょっと話してみろ』と受話器を渡された。
「もしもし~」
『ハイ ン』 ガチャ
と 一瞬で切られてしまう。
「切れちゃったよ? 意味分からない??」 とゼスチャーしながらあ受話器を返すと、『ちょっとこっち』 と外の留めてあった車に乗れと言うので乗ってみる。どこに行くんだ?と思っていると1分位で車が止まった。『さっきの電話の奴の家がここだからちょっと話して来い』というと、車から下りてチャイムを鳴らした。ちょっとして出てきた小柄で浅黒い男性は全身がプルプルと震えていて、見るからに何かの禁断症状っぽい感じだった。そして会釈しながら「こんにちわ」と言う僕に、会釈を返しながら一言『私先生に日本語ナライマシタ。先生は韓国人デス。』と言い、「コノ坂ヲ下ルト河ガアリマス。途中ニ釣リ具モ売ッテマス。今日ハ疲レタ。ムズカシイ。。。。」と言って、家の中に戻ってしまった。案内してくれたホテルの人は『アレは〇〇〇だから・・・』とジェスチャーでクルクルっと頭の上で指を回して見せた。
また1分程車を走らせてホテルに戻り、このホテルに一泊すると伝えると、『わかった~』との事。でもお金を払おうとするとちょっと待てと言う。するとちょっとして今度はハッキリと日本語で『どうしたんですか?』と話しかけられた。みるとそこには小柄なっ可愛い女の子がおり、こちらに歩いてきた。
えらいハイペースで話を進めようとして書いているみたいに感じるかもだけど、こんなペースで進んでいったのだ。空港のタクシー会社で話しをする→タクシーに乗る→ホテルに着く→電話する→家に行く→ホテルに戻る→日本人の女の子現る! この間一時間も経っていない。
で、「釣りに来た~ 」って話をすると 『ポルトガル語は話せますか?』 と聞かれたので、「全然分からない」と答える。せいぜい数字の1~100までと1000と、はい・いいえ・ありがと~・こんにちは・すみません・〇〇はどうやっていくの? これいくら? 位しか分からない。と答える。
呆れ顔で『それはいくらなんでも無茶な・・・・』と言われてしまう。やっぱそうだよなぁ。
すると女の子は何やらホテルの人となにか話し込んでいる。するとどんどんカウンターに人が集まってきて10人以上だ。わからないなからも聞き耳を立てていると、ツクナレとかタライロンとか言ってるのが聞き取れる。その中のアダルトな女性が僕に話しかけてくると、女の子が同時通訳してくれる。
『私の友達で宿をやっている人がいるんだけど、その人が船も持っている』
『宿は一日20レアルで船は一日30レアル』
『よかったらそこに連絡しておいてあげるけど、あ、もうしちゃってますね。』
安!! えええ!? もう連絡しちゃってる!!??
そして僕のノートを取ると、なにやら手紙?みたいにのを書き出した。
『なんかもうそこに行く事になってますね』 と女の子。
そうなのか・・・ いつのまにかそこに行く事になってるのか・・・ ほとんど悩む間もなくどんどん決まっていく僕の行く先。ここまでで伝えた僕の話しは、日本から釣りに来たの一点のみ!!
これでいいのか? と思いつつも これはこれでいいんじゃないか? とも思える。こんな体験は願ったってそうそう出来るものでもないし、すでにホテルのカウンターは20人以上の人で溢れかえっている(笑)
で、その教えてもらったところに行く事に決めたのだけど、聞いた事のない街なのでどこにあるのかすらも分からない。距離はここから200k位らしいので、長距離バスが出ていれが行かれる距離だ。
『どうやって行くかわかりますか?』と聞かれる。が、当然わからない。『行き方を教えてもいいけど、あなたじゃ戻ってこれなくなりますね』とのことで、行くならタクシーにしろとの事。「さすがにその距離のタクシーは高すぎる(飛行機並みになっちゃう)から無理」 と言うと、『じゃあ安い乗り合いタクシーを教えますからそれにして下さい。』なにしろバスは止めたほうがいいとの事なのだ。
そして最後に説明をしてくれた。『乗り合いタクシーの乗り場までこの人が有料で乗せてってくれます。』 乗り合い『タクシーの運転手にこのメモを見せて、着いた先ではこっちのノートの手紙を見せてください。それですべて通じます。』
すぐに出発することになったのでこのホテルには泊まらない事になったのだけど、受付の男性は『いいから いいから楽しんでおいで~』 と僕を送り出し、アダルトな女性も通訳してくれた女の子も『気をつけてね~』 と送ってくれる。その他の20人以上の人達もわいわいしながら送ってくれる。 何度も何度もありがと~といいホテルを後にした。
ホテルからちょっと行ったところにある公園の一角が乗り合いタクシー乗り場になっていた。日本の様にがっつりと駐車場といった感じではないのは、圧倒的な国土からくるものだろうか。そこに数台のタクシーが停まっていて、運転手や乗客と思しき人達がたむろしている。ここまで送ってくれた運転手さんが、僕のこれから向かう街方面行きの運転手を探してくれて、『お金は先払いね、それでさっきもらった住所の書いてある紙を運転手に見せてね。それでOKだから。』僅かに日本語が喋れる彼は日本語でそう言うと、そこらにいる同業者たちの中に混ざっていった。僕は自分の乗るタクシーの運転手にお金を渡すと荷物をトランクに入れてくれ、出発までもう少し時間があるから待ってろとの事だった。
「これから向かうところはどんなとこだろ~ しかし暑いな~」 そんなことを思いながら木陰にいると、『こんにちわ~』 と後ろから日本語で声を掛けられた。振り返ったそこには人の良さそうな男性がいて、その後ろにはここまで僕を乗せてくれた運転手さんがいたので、日本語の話せる友達を連れて来てくれたようだった。どうやら僕の思っている以上に日本語が喋れる人がいて、その上多くの人の心遣いもあって、とにかく日本語が喋れる人との遭遇率が異常に高い。その人はちょっと前まで日本に働きに行っていたとかでかなりペラペラと日本語が喋れた。
『どこまでいくの?』 って話になって説明すると、どうやら彼の家のすぐ側らしく『よかったらここ寄ってね』 と一枚の名刺をくれた。話をしている内に乗り合いのメンバーが揃ったようで出発となった。
走り出したタクシーはあっちこっちと寄り道をして、建築材やらダンボールやらの荷物を積んでいき、車内はどんどん狭くなっていった。幸い僕はロッドケースを支えてなきゃいけなかったので助手席にいたのでよかったが、後部座席は座りにくそうだった。そうやって街の中を走り回った後、やっとハイウェイ的な道に出た。初めは道がアスファルトで舗装されているのだけど、しばらく進むと砂利道に変わり、そんなところでも時速100km以上で飛ばしているので結構怖い。
同じ様な景色が続き、所々にある民家や牧場の出入り口の前を通る時はなんとなくその辺りを意識しているような運転をしていて、突然急ブレーキをかけて停まった。そこには着の身着のままの老人がおり、何らや早口で話をしてお金を受け取り、荷物で狭くなった車内のすき間に乗せると車は急発進した。
一人当たりの料金が定額の乗り合いタクシーなので、一人でも多くお客さんや荷物を乗せていたほうがお金になるのだから、僅かに空いている隙間でも埋めたいワケで、今まさに車内も屋根もトランクも満載になった事に気をよくしたのか、運転手のオッサンはラジオから流れる歌に合わせて鼻歌を歌いだした。もうそのさまは 『うっひょう! やったぜコンチクショウ!!』 って感じでハイテンションなのだけど、マッチョなオッサンがコチラを向いてサングラス越しにニヤリとするのはいささか怖い。 『オラオラ行くぜ~!!』とどんどんスピードが上がって行き時速130kmを超えだした時にいきなりオッサンのテンションが下がりだした。「今度は何だ?」そう思い見てみると、なんとオッサン寝てる!!
ヤバイ!! コレは死ぬ!!
「うおっ!」 自然と声が出ると、オッサンは目を覚ます。コッチを見て『寝てないよ?』 みたいな顔をするのだけど、いやいや絶対寝てたじゃん!? で、気分転換でラジオの局を変えてアップテンポなのを探している。ゴキゲンな局が流れてきてオッサンは鼻歌を歌いだし・・・・ しばらくすると・・・ テンションが下がりだし・・・・ オッサンを見ると・・・・ 寝ている(涙) こんな砂利道で100kmオーバーで飛ばしてるだけでも怖いのに運転主が寝られるとか考えられん!! 「ウオッホン!!」 わざとらしく咳払いをするとオッサン目覚める。『いやいや寝てないよ?』 なオッサン。さらにボリュームを上げガムを噛みかながら鼻歌を歌いつつしばらくするとまたウトウトしだす(涙) そんな事を繰り返すうちに、同乗者が一人また一人と降りてゆき、僕の目的地らしきところにも到着した。運転手のオッサンはトランクから荷物を降ろすと、大声で家の人を呼び出しているのだけどんかなか出てこない。5分・・・ 10分・・・ 随分待ってるけど誰も出てこない。「このオッサンいい加減だしホントにここで合ってるのか?」 内心そう思いながら待っていると、家の中から一人の男性がでてきた。